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循環する地域づくり研究所

 
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ブログ( 69 )
 
産直提携・身土不二の会・メルマガ【第7号】
2017/06/17


発行日:2017年6月10日
発行責任者:循環する地域づくり研究所・主宰 東孝次
(産直提携・身土不二の会・事務局)
発行頻度:不定期
今回のテーマ:農業の究極は、自然栽培では

農業の究極は、自然栽培では
 農業を実践していない者が、机上で整理したものです(引用した著書の多くの筆者は農業実践者ですが)。次のURLに掲載していますので、お時間の取れるときにご一読ください。
また木村秋則さんの著書「百姓が地球を救う」(東邦出版 2012年)も、ぜひお読みいただければと思います。


「農業の究極は、自然栽培では」のURL:
http://blog.canpan.info/junkansurutiiki/archive/76



 【お願い】
 皆さんからの疑問、質問、原稿を募集しています。併せて、この会に参加くださる方も募集しています。参加を希望される場合は、お名前、ふりがな、住所(大字名まで)、E-mailアドレス、Facebook登録の有無、主な所属団体を事務局までメールでお知らせくださるようお願いします。また興味を持ってくださる方への呼び掛けもお願いします。
(事務局アドレス:noujin5283@ae.auone-net.jp(@を大文字にしています))

 

産直提携・身土不二の会・メルマガ【第6号】
2017/06/17
発行日:2017年4月16日
発行責任者:循環する地域づくり研究所・主宰 東孝次
(産直提携・身土不二の会・事務局)
発行頻度:不定期
今回のテーマ:
・有機農業の取組は、比較的余裕のある人たちのものとならないか
・新田浩之さんに聞く
・「第4回山口市有機農業推進会設立準備会」開催
・【先進事例紹介・第三弾】「新潟 十日町 人と自然と命をつなぐ『なぐも原・結の里』」


有機農業の取組は、比較的余裕のある人たちのものとならないか
 小田さんとの取組を始める際にも、幾人の方から有機農業の取組は、比較的余裕のある人たちのためのものとならないかといったご指摘を受けてきました。私も子供の貧困など、世の中にはもっと切実な課題があるのではないかと自問はしています。またスーパーでは午後7時前後の半額セールを待って弁当などを買っている人たちが多くいると聞いています。品物を定価より安く購入することに、経済的にはその必要がないにも関わらず大変な喜びを感じて参加している人たちもいらっしゃるとは思いますが、安さにひかれて買わざると得ない人たちもいらっしゃるという厳しい現実も、現にあります。しかも格差はますます広がっている状況にあります。このような中、手間暇のかかった有機農産物は、どうしても高くならざるを得ません。そのため比較的余裕のある人たちを中心に購入されることになるのです。確かにそのような見方ができない訳ではありませんが、有機農業の取組はそのような観点からだけで評価していいのでしょうか。うまく説明できないかもしれませんが、自分の頭の整理も込めて、敢えて挑戦してみます。
【下の写真は、福岡県東峰村です(「日本で最も美しい村」連合のHPより)】
福岡県東峰村.jpg

 既に書きましたように有機農産物を手にするのは、主に比較的余裕のある人たちだと思います。有機農業を実践しておられる方に聞くと、自分の信じる生き方を実行することであり、持続可能な農を継続したいからだとおっしゃいます。つまり有機農業を進めるということの主な目的は、比較的余裕のある人たちために健康で安全・安心な農産物を供給するということではないのです。有機農業の取組は、持続可能な農業を取り戻すことにより、次代に繋がるまちづくり・地域づくりを進めることでもあります。また市場経済では評価されない美しい自然景観を守り、環境を保全することでもあります。さらにいえば、今日一般に行われている、顔の見えない販売システムの問題点を克服することでもあります。そのために私たちが考えなければならないことは、特に子育て世代の比較的余裕があるとはいえない人たちにも、行き届くよう関係者の心遣いで可能にしていく仕組みづくりなのではないでしょうか。誰もが健康で安全・安心な食が確保できるよう、一緒に行動してまいりましょう。

新田浩之(しんたひろゆき、アグリプロジェクト・代表社員)さんに聞く
 まず新田さんを少しご紹介しておきましょう。大学を卒業され研究職として化学メーカーに就職されます。アレルギーの研究を通じて、その原因は食にあるのではないかと気づかれました。そこで食の健全化に取り組もうと、秋川牧園で7年、きららオーガニックで2年、野菜工房で9年と、山口の有機農業に深く関わってこられています。そこでお忙しいところ、時間をお割きいただき、お話を聞かせいただきました。その概要を報告させていただきます。
 最初に「山口市における有機農産物の生産、消費の実態と今後の可能性」についてお尋ねしました。生産者の規模は小さい上、若手が少なく、高齢化が進んでいるという現状だそうです。やはり定年退職後始められる方が多いようです。いつも取り引きしている訳ではないが、新田さんの「野菜工房」に搬入している生産者は7名くらいだそうです。市内はもちろん県内でも有機農産物を確保するのが難しく、適宜、県外から入れられているそうです。有機農産物を希望する消費者はある程度あるようです。今後の可能性については、厳しいのではないかとおっしゃいました。ただ販売先さえ確保できれば、もう少し広がる可能性はあるのではないかとも言われました。また有機農業を継承する研修の仕組みがあると、もっと有機農業が拡がっていくのだがともおっしゃいました。山口の有機農業者に対して閉鎖的な感じを持っていらっしゃるようで、他県ではもっとおおらかなように感じるとも言われました。私もそのような印象を持っていますので、もっと幅広い交流が必要なのかもしれません。
 次に小田さんと進めています“産直提携”の取組についてお尋ねしました。お金の支払いなど、企業経営の経験のない人がやるのは、なかなか難しい面があるのではとのことでした。扱える農産物が少ない状況のようなので、まず参加してくれる生産者を集める必要があるのではないかとおっしゃいました。その一方で消費者についても、いきなり会員募集ではなく、事前に趣旨等を理解してもらって、協力してもらえる人を見つけ出すことが大事ではないかと言われました。理想的な思い先行といった面があるので、じっくり腰を据えて取り組む必要があるのではないかとの助言も受けました。生産者は忙しいので、少し時間に余裕のある人が協力してくれるといいですねとも言われました。
 新田さんには「山口市有機農業推進会準備会」の世話人になってもらっています。今後の推進会の方向についても話が及びました。前回の世話人会では推進会が何を目指しているのか分からなかった、ミッションは「山口市内で有機農業を普及する」「有機の里づくりを目指す」ということでいいと思うので、それを具体化するためのビジョンづくりが必要なのではないかとおっしゃいました。今後、具体化に向けた取組が必要のようです。
 有機農業の現場を知らない私にとっては、とても有意義な時間となりました。お忙しい中、貴重な時間をお割きくださった新田さん、ありがとうございました。

「第4回山口市有機農業推進会設立準備会」開催
 「第4回山口市有機農業推進会設立準備会」が、3月23日、山口市役所の会議室で開催されました。その概略をご報告します。
 2月26日に開催した金子さんの講演会の参加者の感想は、金子さんの活動、講演内容を評価する声が圧倒的でした。この高評価の感想を受けて、次に繋がる活動に、早急に取り組む必要があるということは、世話人相互では一定の共通認識を持つことができました。今後の活動としては、「農園の視察見学」は畑に作物がない可能性があり、「ぼかし肥料の講習会」の開催しようということになりました。さらに「金子さんの農園見学」についても、金子さんの意向を確認した上で実施を検討しようということになりました。そのほか世話人の拡大・募集、会員募集、部会の設置など、様々な「今後、議論・検討すべき事項」が挙げられました。

【先進事例紹介・第三弾】「新潟 十日町 人と自然と命をつなぐ『なぐも原・結の里』」
 今回は、第三弾として、「新潟 十日町 人と自然と命をつなぐ『なぐも原・結の里』」をご紹介します。「なぐも原・結の里」のモットーは、「人と自然・社会の中から生まれたふれ愛の絆を大切に、共に手を携えて生きていく、そんな持続可能な村づくりをめざして」おられます。この団体が取り組んでおられます「農村交流」、「ダンボール堆肥交換事業」、「お米の学校」について、会のHPより転載します。
【下の写真は、「なぐも原・結の里」の活動写真です(団体のHPより)】
なぐも原.jpg

農村交流
 私たちは土作りを重視しながら資源循環型の農業生産を行っています。
 ここでできた農産物を販売することで収益を得ていますが、単に商品の売買だけに留まらず本当に顔の見える関係を築きながら、生産物を購入頂きたいと思っております。最近はスーパーなどでも、売り場に生産者の顔写真が掲示してあったり、「顔の見える関係」が演出されていますが、本来の意味は生産者と消費者が交流しながら信頼関係で結ばれることだと考えています。その信頼関係を作るきっかけとなるメニューを準備していますので、是非南雲原を訪れてみてください。南雲原の自然を満喫しながら、さまざまな体験をしていただき、そして生産者との交流を深めていただければと思います。

ダンボール堆肥交換事業
 結いの里では、資源循環型農業を標榜していますが、家庭で出る生ゴミをダンボール箱を使って堆肥化し、その堆肥を生産者が受け取り圃場に利用し、できた生産物の一部を消費者に還元するという取り組みを進めています。

お米の学校
 「お米の学校」の活動は平成10年に東京都内の小学校から始まりました。この活動は、子供たち全員がバケツの中で種もみを植えつけることから始め、世話をしながら収穫まで育て、そして獲れたお米をおにぎりとして食べます。その後にはワラを使って、工芸品を作ることも行っています。 稲という生き物を育てる過程で子供たちはさまざまなことを学んでいきます。

「なぐも原・結の里」のHP:
http://www.farmersnet.net/product/070315110918/070315110918_070406144034.html


【お願い】
 皆さんからの疑問、質問、原稿を募集しています。併せて、この会に参加くださる方も募集しています。参加を希望される場合は、お名前、ふりがな、住所(大字名まで)、E-mailアドレス、Facebook登録の有無、主な所属団体を事務局までメールでお知らせくださるようお願いします。また興味を持ってくださる方への呼び掛けもお願いします。
(事務局アドレス:noujin5283@ae.auone-net.jp(@を大文字にしています))

 

農業の究極は、自然栽培では
2017/06/16
 先日、「農業を実践していない者が農業を語るべきではない」と言われたばかりです。しかし私は敢えて「農業の究極は自然栽培ではないか」と、多くの人に伝えたいと思っています。作物は肥料を与えなければできないと思い込んでいました。そんな私が、自然農法や自然栽培を詳しく知ろうと思ったきっかけは、テレビからの情報でした。JAが自然栽培に取り組んでいるといったニュースに接したのです。農薬、肥料の販売による利益優先のJAではなく、地域の景観や環境の保全を目指すことこそJAの役割であるといった趣旨の発言を聞き、これぞ本物のJAだと感じたのです。

 どこのJAが聞き洩らしましたので、早速ネットで検索することにしました。石川県羽咋市の「JAはくい」でした。あのローマ法王に献上した米で一躍有名になられた高野さんの地元のJAです。羽咋市との協働で、「奇跡のリンゴ」で有名な木村秋則さんを塾長とする「のと里山農業塾」を開講し、自然栽培の普及に努めておられるのです。これも高野さんのアイデアからのようです。世界農業遺産に認定された「能登の里山里海」を次世代に継承していくため、人と環境に優しい農業の理念と技術を学ぶことのできる場を設けておられるのです。ネットの情報によると、4期生となる塾生は、昨年の12月から今年にかけて1年間の研修に取り組んでおられるようです。
【下の写真は「羽咋市神小原(ミコハラ)地区」です(「のとねっと」より)】


 さらに羽咋市では、自然栽培を羽咋のブランドにしようということで、「羽咋市自然栽培新規就農者支援亊業」も実施しておられます。この亊業は「自然栽培を羽咋のブランドにしませんか」といったキャッチフレーズで取り組まれています。伝統的な農業とそれに関わって育まれた文化、景観、生物多様性に富んだ地域を守るために、羽咋市と「JAはくい」とは、協働で自然栽培の普及を目指しておられるようなのです。このような地域こそ、行政とJAとの理想的なあり方ではないでしょうか。多くの地域で見習ってほしいものです。

 ほとんどのJAは、農家に肥料や農薬を販売することを業としています。そんなJAがなぜ無農薬、無肥料の自然栽培に取り組むのでしょうか。「JAはくい」のHPには、「“世界農業遺産に認定された『能登の里山里海』を次世代に継承する”ために、エコ農業・自然栽培を軸とする『環境保全型農業』の普及に努めていきます」とあります。生命力が強く、本当に安心で安全な国産の無農薬農産物を作り出すことで、再び朱鷺が大空を羽ばたくことの出来る「昔の里山」を復活させることを追求しておられるようです。このような農業や地域を目指すことこそ、JAの役割であり、行政の役割といえるのではないでしょうか。
「JAはくい」より早い時期から自然栽培に取り組んでいるJAの存在を、木村秋則さんの著書「木村秋則と自然栽培の世界」(以下「自然栽培の世界」という)で知ることができました。そのJAは「JA加美よつば」です。当時の代表理事組合長だった池田衛さんは、「自然栽培の世界」の中で、JAの将来目指すべき方向について、次のように書いておられます。
【下の写真は「自然栽培の世界」の表紙です】


 要するに徹底的に食べる人の安全・安心、あるいは地球環境を考えられる農村地域になる。あとはそういうことで共鳴できるところとしっかり手を握り、企業の論理ではなく協同の論理、互いに助け合って生きていくという新しい価値観をもった社会を作りたい、というのが究極の目標です。(P140-141)

 このような元組合長さんの力強い発言がった上に、自然栽培を実践しておられる組合員お二人の方の対談が、「自然栽培の世界」に掲載されていただけに、かなり期待してネット検索しました。しかしその結果は残念なものでした。「JA加美よつば」のHPの中には、「安全・安心なお米を提供しようと、農薬・肥料の使用量を5割削減(一般米と比べ)して栽培したお米を『特別栽培米』として販売しています」といった記述しか見つけることはできなかったのです。自然栽培を進めているといった内容は、私には見出すことはできませんでした。

 「蠅笋泙函彗緝充萃役の高橋啓一さんが、「岡山で自然栽培の農商工連携急ぐ」と題して、「自然栽培の世界」に寄稿されています。高橋さんは、奇跡のリンゴのおいしさを味あわい、木村さんが出演されたNHKの番組のDVDを見て感激され、回転ずし店の経営の傍ら農業をやっておられることから、自然栽培に取り組もうと決意されました。そこで仲間を募って、2009年12月、任意団体「岡山県木村式自然栽培実行委員会」を立ち上げられます。そして翌年の2月に、木村さんを招いての懇談会や懇親会を開催されました。さらに2010年9月には、NPO法人としての「岡山県木村式自然栽培実行委員会」を設立されます。会のHPによると、「JAグループ岡山」とは協力関係にあるそうです。そのJAは、「自然栽培は各種ある栽培法の一つとして捉え、慣行栽培、有機栽培同様、自然栽培に取り組むJA組合員も公平にサポートする」という立場をとっておられるのだそうです。委員会の大きな活動の柱の一つが「認証活動」だそうです。栽培過程において、木村さんの提唱する「自然栽培」といえるかどうかを見極められるのだそうです。そのほか「春の自然栽培めぐり」や「お田植祭」などにも取り組んでおられます。亊業家が関わられることが、こんなに力強い活動となるのかということを痛感させられます。
【下の写真は「自然栽培の世界」の表紙です】


 木村秋則の著書である「百姓が地球を救う」(以下「百姓」という)によると、もう1つNPO法人があるようです。「JA加美よつば」とも関連のある「木村秋則自然栽培に学ぶ会」というNPO法人です。早速ネットで検索しました。所在地は東京都江東区になっていますが、フィールドは宮城県加美郡のようです。2010年9月に設立されましたが、HPでは、「ボランティアスタッフ募集のお知らせ(2014/03/05)」が「最新情報」となっており、現在の活動状況は不明です。

 次に「木村式自然栽培実行委員会」というキーワードでネット検索してみました。その結果、木村さんも書かれているように全国各地に自然栽培が広がっている様子が分かりました。NPO法人としては、「大阪府木村式自然栽培実行委員会」と「鳥取県木村式自然栽培実行委員会」があります。社団法人としては、「(社)新潟自然栽培研究会」の1つでした。任意団体としては、「青森県木村式自然栽培実行委員会」、「徳島県木村秋則式自然栽培実行委員会」、「木村秋則自然栽培研究会 -北海道の会-」、「木村式自然栽培勉強会@山梨」などが検索できました。全国各地において様々な方のご尽力で、本物を求める活動が展開されています。

 なお木村さんが指導された自然栽培の実験田のある石川県能登地域と、新潟県佐渡市という2つの地域が、「世界重要農業遺産システム(GIAHS、ジアス)」に、わが国で初めて認定されたそうです。それは先進国でも初めての快挙といえるのだそうです。「世界重要農業遺産システム」をWikipediaで調べました。「伝統的な農業や林業・漁業と、農林漁業によって育まれ、維持されてきた、土地利用(農地やため池・水利施設などの灌漑)、技術、文化風習などを一体的に認定し、次世代への継承を図る目的に2002年に国連食糧農業機関(FAO)が創設した。そしてそれを取り巻く生物多様性の保全を目的に、世界的に重要な地域を認定するもので、持続可能な農業の実践地域となる」とあります。この認定について木村さんは、「百姓」で次のように書いておられます。
【下の写真は「自然栽培の世界」の表紙です】


 そして2011年、わたしが指導した自然栽培の実験田がある石川県能登地域と、新潟県佐渡市という2つの地域が、FAO(国連食糧農業機関)によってGIHAS【ジアス】(世界重要農業遺産システム)に認定されました。日本初、先進国で初めての快挙です。
 認定にあたり、わたしの自然栽培は肥料・農薬・除草剤を使わない『自然栽培AKメソッド』(Natural Farming AK Method=木村秋則式)として紹介されました。津軽のいちリンゴ農家の栽培法が、能登の水田による実績で、国連機関に認められたことは画期的です。
 自然栽培の正当性や将来性、そして責任をひしひしと感じた瞬間でもありました。(P203-204)


 ではいったい自然農法や自然栽培とは、どのようなものなのかをながめてみましょう。そのために、福岡正信さんや木村秋則さん、さらには自然栽培を科学的に研究しておられる杉山修一弘前大学教授の著書を、引用させていただきながら見てまいります。なぜ自然栽培が本物ではと感じているかといった観点から、整理させていただこうと思います。少し長くなりますが、お付き合いをお願いします。引用させていただいたのは、次の著書です。

・「木村秋則と自然栽培の世界」(木村秋則著 日本経済新聞社 2013年(初版2010年))
・「百姓が地球を救う」(木村秋則著 東邦出版 2012年)
・「すごい畑のすごい土」(杉山修一著 幻冬舎 2014年(初版2013年))(以下「すごい畑」という)
・「自然農法 わら一本の革命」(福岡正信著 春秋社 2013年(初版1983年))(以下「自然農法」という)
・「緑の哲学 農業革命論」(福岡正信著 春秋社 2017年(初版2013年))以下「緑の哲学」という)

 今日の社会は、余りにも科学技術が優先され、循環している自然に寄り添って生きることを忘れているように感じます。その意味から、福岡正信さんの指摘は本質をついているように思います。しかし、余りにも世離れしており、万人には付いていけません。仙人にならなければ実行できないように感じるのです。その点、木村秋則さんの自然栽培は、ある意味、現実的です。ここら辺りは、杉山さんが「自然栽培の世界」の中で、次のように指摘されています。

 木村秋則さんの「自然栽培」も福岡正信氏の「自然農法」も基本的考え方は同じです。しかし、いくつかの点で違いがあります。一番の違いは、木村さんが自分の農法を芸術や哲学ではなく、誰もが利用できる栽培技術に作り上げようと努力しているところだと思います。
 それは木村さんが自分の農法を「自然栽培」と名付けていることからもうかがえます。何もしないで自然に任せるのではなく、むしろ作物自身が本来持っている能力を発揮し、よく育つために積極的に働きかけをする。それが福岡正信氏の「自然農法」と木村秋則さんの「自然栽培」の違いと言えるでしょう。(P58)


 木村さんが社長を務めておられる「木村興農社」の熊田浩生主任研究員の「なぜ自然農法でなく自然栽培なのですか」という質問に対して、木村さんは「自然栽培の世界」の中で、次のように答えておられます。

 農家の人は農業で生活をしていかなければならない。なおかつ永続性がなければならない。(P35)

 木村さんは、ご自身の提唱されている自然栽培について、「百姓」の中で、次のような記述をされています。
【下の写真は「木村さんのリンゴ園【8月28日撮影】です(「百姓」より)」】


 草をぼうぼうに生やした畑が見せてくれる姿は、驚嘆の連続、毎日発見ばかりでした。そして、わたしはようやくひとつの答えにたどり着いた気がしました。
 まず、無農薬、無肥料栽培のリンゴ畑に雑草を生やすと、畑の土が大自然の山の土のように変わります。好き放題に伸びた各種雑草の根にさまざまな菌類やバクテリアが集まり、肥料分が足りないうちは、ずっとバクテリアが活動してくれます。すなわち、人間が肥料を施す作業は永遠に不要なのです。(P76-77)
 自然栽培(Natural Farming AK method)とは
「外部からの資材の投入なしに自然の力を利用して栽培を行う農業」(P82)

 EM農法のように有用微生物群を投入したりしません。なにも与えない、加えない自然栽培は、土壌生物の群集構造を、外部からではなく内部から変えていきます。(P84)

 いままで肥料・農薬・除草剤を与えて過保護にしてきた畑を。いきなりなにもしないで放っておけば、もちろん問題が出ます。果樹や農作物の生長は遅れ、病気や虫の被害を受けます。それは当たり前です。
 やめる代わりに、2つのことが必要です。
 ‥擇魄蕕討襪海
 ∈酳の能力を引き出すこと
 それが肥料・農薬・除草剤の代わりになります。そのためには人間の働きかけが必要です。(P86)

 「自然活かす」「土を活かす」のが自然栽培のポイントです。(P127)



杉山さんは、慣行農業と自然栽培との違いについて、「自然栽培の世界」と「すごい畑」の中で、次のように記述されています。
【下の写真は「すごい畑」の表紙です】


 近代の作物栽培では、化学肥料を施与して十分な養分を供給することと、農薬を撒き、作物以外の生物を排除することで高い生産効率を可能にします。それに対して、自然農法や自然栽培では外部からの化学肥料の投与ではなく、土の中の微生物の力を利用して、生態系内の養分循環を活発にすることで植物に養分を供給します。
 また農薬を撒かないことで農地に多様な生物相を作り上げ、生物間の相互作用(生き物と生き物の関係)を利用し病害虫を抑制することを基本にしています。
 福岡氏の「自然農法」は養分循環と生物間相互作用の発達を自然に任せる立場ですが、木村さんの「自然栽培」では、人間が手を加えることで養分循環と生物間相互作用の発達を促進します。土を耕すかどうかに端的に現われています。土を耕すことで土壌中の微生物の活性を向上させ、そのことで土壌の養分循環を促進しようとするのが「自然栽培」の立場と言えるでしょう。(「自然栽培の世界」P58)

 慣行栽培と自然栽培は全く逆の方向を向いた栽培システムです。慣行栽培は生物多様性を排除し、自然栽培は生物多様性を利用します。(「すごい畑」P151)

 「緑の革命」の技術(慣行農法(筆者注))に対して、自然栽培には少なくとも2つの有利性があります。1つは、肥料と農薬を使わないため、それにかかる生産コストを抑えることができることです。慣行の作物栽培では、化学肥料と農薬にかかる経費は労働費を除く生産コストの2割から5割を占めています。
 同時に自然栽培では、肥料・農薬を散布する作業にかかる労働時間を節約できます。
 自然栽培のもう一つの有利性は、農産物の安心・安全性です。
 <中略>
 さらに、自然栽培でつくられた食品は、腐りにくいという特徴もあります。
 自然栽培の農産物は、有機栽培以上に品質で優れるので、慣行栽培の農産物に比べ高い価格設定が可能です。低コストと高品質・高価格は、自然栽培の大きな利点です。
 一方、自然栽培の弱点は収量が少ないことです。
 低収量という弱点を低コストの生産と高品質の農産物という利点がどれだけカバーできるかが今後の発展の鍵を握っています。(「すごい畑」P177-178)


 「自然栽培の世界」には、木村さんと同じようなご苦労をされながら自然栽培に取り組まれ、成功された方々が寄稿されています。自然栽培は木村さんだけの技術ではなくなっています。無肥料とは、にわかには信じがたいことですが、木村さん以外の実践者がいらっしゃるのです。宮城県登米市で自然栽培を実践しておられる成澤之男さんは、自然栽培について「自然栽培の世界」で次のように書いておられます。
【下の写真は「木村さんのリンゴ園【5月24日撮影】です(「百姓」より)」】


 自然栽培は「現在の科学ではどうにもならない大自然の力を率直に認め、科学的な智恵と自然の素晴らしい力を借りて、植物に対するマイナス部分を極力減らし、プラス部分が最大限に働くように人間が植物を手助けする努力をすること(P126)

 科学者としての杉山さんは、「自然栽培」を科学の研究対象とすることについて、「すごい畑」で次のように書いておられます。

 「奇跡のリンゴ」を科学の研究対象とするには、前提条件が少なくとも2つあげられます。
 それは、再現性があることと、メカニズムの解明が可能なことです。
 同じことが繰り返されることを科学では「再現性」といいます。
 <中略>
 「奇跡のリンゴ」をつくれる人は、木村さんだけではありません。
 また「奇跡のリンゴ」の栽培技術は、現在「自然栽培」として、イネ、トウモロコシ、茶、ニンジン、トマト、ジャガイモなど多くの作物に広がり、いずれも成功を収めています。
 これらの例で分かるように、「奇跡のリンゴ」の栽培技術は木村さん以外の人でも利用することができるのです。
 つまり、「再現性」があるのです。
 「奇跡のリンゴ」は科学的な研究対象にすることが可能であり、また一般的な技術として普及できることを示しています。
 しかし、木村さんの農法に懐疑的な農業関係者は多くいます。
 その大きな原因は、現在の農学の常識では「奇跡のリンゴ」の成功をうまく説明できないことにあります。これまでの農学の知識から「奇跡のリンゴ」が成功した理由を説明することは、かなかなの難問です。
 「奇跡のリンゴ」の栽培法が、これまでのリンゴ栽培の常識とあまりにかけ離れているからです。
 残念ながら、まだ「奇跡のリンゴ」が成功した科学的メカニズムの詳細は、解明されていませんが、その「枠組み」なら示すことができるようになっていると私は考えます。(P22-24)


 また杉山さんは有機栽培と自然栽培の違いや自然栽培の可能性について、「自然栽培の世界」で次のように書いておられます。

 ところで、有機栽培と自然栽培はどこが違うのでしょうか。
 化学肥料も合成農薬も使わずに作物を栽培するという点で、2つの栽培法には共通点があります。しかし、作物栽培に対する基本的な考え方に違いがあるように感じます。有機栽培は近代農法の反省に立って、人工的に合成した肥料や農薬を使用せずに堆肥や鉱物など自然の代替物に置き換えるプロセスで成り立っています。
 それに対して自然栽培は福岡正信氏の「自然農法」に出発点があり、作物の本来の力を引き出すために人間が手助けするという考え方です。つまり、有機栽培は近代農業から資材の投入を少なくする減点法としてスタートしているのに対して、自然栽培は何もないところからスタートし、加算していく違いと言えるのではないでしょうか。(P62)

 私は科学者として、自然栽培に大きな可能性を感じています。その理由の1つは、木村さんの自然栽培には科学的に未知な現象がたくさんあることです。
 例えば、自然栽培を続けて3年くらい経つと、なぜか病気が減ってきます。この現象はまだ科学的には説明できません。案外、そこに科学の常識を覆う大きな発見が潜んでいるかもしれません。科学者にとってこのような研究テーマは大変魅力的に映ります。
 もう1つの理由は、「自然農法」「自然栽培」と続く栽培法は日本のオリジナル技術であることです。「自然栽培」の誕生には日本人の独特の自然観が少なからず関係していると思います。このオリジナルな技術の芽を伸ばして、普遍的な技術にまで育て上げることは、日本人、日本社会にとって大変意義のあることではないでしょうか。(P63)


 福岡正信さんの考え方には、「今の世の中というものが、あらゆる点で専門化され、高度化されてきたために、かえって全体的な把握ということが非常にむずかしくなった」(「自然農法」P30)、「価値観の逆転がないかぎり、根本的解決はできない」(「自然農法」P102)、「最終の目標っていうものは、単に作物を作るだけじゃなくて、人間完成のための農法になってなきゃいけないんだ」(「自然農法」P144)、「自然食の最大の価値と役目は、人間を自然のふところに還すことにある」(「自然農法」P223)、「食物生産の原点は身土不二、自給自足です」(「自然農法」P256)、「文明に反逆して、自然に還れ」(「緑の哲学」P120)などなど、傾聴に値する部分も多いのです。しかし世捨て人的な暮らし方は、万人向けとは言い難いように感じます。同感する人たちが、主体的に取り組まれたのでいいのだと思います。ただ「国民皆農の提案」は、なかなか面白い提案のように考えます。「自然農法」から該当部分を引用させていただきます。絵空事ではなく、自分の食料は自分で確保するという時代が来ているのかもしれません。
【下の写真は「自然農法」と「緑の哲学」の表紙です】


 私は、実は、国民皆農っていうのが理想だと思っている。全国民を百姓にする。日本の農地はね、ちょうど面積が一人当たり一反ずつあるんですよ。どの人にも一反ずつ持たす。五人の家族であれば五反持てるわけです。昔の五反百姓復活です。五反までいかなくても、一反で、家建てて、野菜作って、米作れば、五、六人の家族が食えるんです。自然農法で日曜日のレジャーとして農作して、生活の基盤を作っておいて、そしてあとは好きなことをおやりなさい、というのが私の提案なんです。(P119)
 実は、自然栽培を前提とした場合、私にとっては困ることがあるのです。これからの地域づくりの方向だと考えていました“循環する地域づくり”に大きな修正が必要となるからです。人間をはじめとする生物が排出するものを、どう処理して次に繋げていけばいいのかが分からないでいるのです。つまり廃棄物の処理により生成されるものを肥料として使う必要がなくなるのです。じっくり時間をかけて山の土のような状態にして、肥料としてではなく、土として地球に還せばいいのかもしれません。このことについてヒントをお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひご助言をお願いします。
もう1つお願いがあります。以上書いてきましたことは、農業を実践していない者が机上で整理したものです(引用した著書の多くの筆者は農業実践者ですが)。ぜひ農業に取り組んでいらっしゃる方からのご意見をお聞かせ願いたいと思っています。お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。

 

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