市民活動団体を運営をしていくうえでスタッフ同士が意思疎通を図る機会である会議や定例会はとても大切です。でも、それが形ばかりになっていませんか?みんなと対等に対話できていますか?ちゃんと必要な意見を吸い上げられていますか?
ここでは初心者でもとっつきやすい対話手法である、カードを使ったワークショップを学びます。
1.カードを使ったワークショップ
市民活動を進めていく上で、忘れてはいけないことは、「なぜ、自分達がこの活動をしているのか」ということです。社会の問題を解決していくための使命感を忘れてしまって、事業をするための組織になってしまっては市民活動のよさは発揮できません。イベントを開催するときも、何を目的として行うのかを確認していかないと、自己満足の単発的な事業となってしまいます。また、活動開始時点でメンバーが活動の目的をはっきりと共有できていない場合、活動がマンネリ化しイベントや事業を継続することが目的となってしまうことも。
そこで、他組織も一緒になって実行委員会形式で行う場合などに適している、カードを使った課題の整理の仕方を紹介しましょう。課題を整理して、事業を行うだけでなく、団体の目的、中・長期展望を整理していくときにも役立ちますよ。
ぼんやりとしたテーマの場合
活発に意見を交換してもらうにはテーマはできるだけ絞りこんだほうがいいのですが、それが難しい場合はでるだけ意見を出しあった後に全体の意見を集約していくという手法があります。
Step1
テーマについて、思いつくままに自由に話し合う考えられることを全て出し合っていきます。この時、他人の意見を否定したり批判したりしてはいけません。(20分)
Step2
カードを作るステップ1で出た意見を思い起こして名刺大のカードに1項目ずつ意見を分かりやすく大きな字で書いてください。一人10枚程度、全体で数十枚になるまでカードを作ります。(15分)
Step3
カードの読み上げ参加者が交代で自分のカードを1枚ずつ読み上げ、他の人のカードと内容が同じものはそのカードに重ねてテーブルの上に置いていきます。全てのカードを読み終わるまでこの作業を繰り返します。(45分)
Step4
仲間分け何枚かのグループになっているカードには、内容をひとまとめに表現するようなタイトルカードを作り、ひとまとまりとします。ステップ3とステップ4の作業を繰り返し、内容の類似したカードのグループが全体で数グループになるまで続けます。この時、いつまでたってもグループにならない1枚だけのカードが残っても気にしないで下さい。(15分)
Step5
模造紙へ貼り付けるグループになったカードを模造紙の上に内容の関係性を考慮して配置します。グループの位置がおおよそ決まったら、全てのカードが読み取れるようにグループ毎にカードを広げて並べ、模造紙に貼り付けます。(15分)
Step6
見やすく視覚化する模造紙上のカードをグループ毎に線でくくったり、関連するグループや対立するグループ、無関係なグループ、原因や結果の関係性などがひと目でわかるようにグラフィック表現を工夫します。すべての意見のカードによって構成されたテーマの全体構造が浮かび上がってくるようにすることがポイントです。(10分)
多様な主体が短時間で議論を深め結論を得る場合
ワークショップの時間に限りがある場合は、想定される意見を前もってカード化しておくという手法もあります。
Step1
想定される意見カードの準備事前に基本的な考え方を整理したうえで(事前にヒヤリングやインタビューで幅広い考え方を吸い上げておくことも重要)、その課題に対するできるだけ幅広い代表的な考え方をいくつかの文章にまとめます(10~15項目)。1枚のカードには1つの意見を記入し、記入した全ての意見のカードをそろえ一組とし、参加者の数だけカードのセットを用意しておきます。
Step2
カードを選択一人一組のカードを持ち、個人個人で自分の考え方に近い意見のカードを3枚選び出します。グループの参加者が8人以上の場合は、二人一組で最初のカード選びを行う方がよいでしょう。(10分)
Step3
選別する各自選んだ3枚のカードを出し合い、グループの意見として全体で3項目に絞り込んでください。このとき、できるだけカードの文章の行間をふくらませて議論して下さい。単純な多数決でカードを選ぶのではなく、どうしてそのカードを選んだかに耳をかたむけて下さい。用意されたカードに適切に表現できない場合は、新たに別のカードをグループで作ってもかまいません。(20分)
2.ワークショップの留意点
イベントや事業を行うときには、それを行う意義や目的を定め、柱立てをするまでが大変な作業です。
そこを、できるだけたくさんの人の思いを反映させてつくっていけば、実行する段階でそれだけたくさんの人が関わってくれます。
市民活動は、主体的な想いで動いていくものですから、メンバーに主体的にかかわってもらえるように、参加の意欲を掻き立てるワークショップの手法を用いることは有効な方法です。その場合の留意点もご紹介します。
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- 具体的なプログラムを立て成果目標を持つこと。
- 参加者が主体的に関わっていること。
- 参加者がワークショップ開催の目的や自分達の役割を理解しているかどうか。
- 途中参加の人や、間で欠席せざるを得ない人とどのように内容を共有していくか。
- 参加者の関心に合ったレベルのものになっているかどうか。
しばしば、ワークショップは、自由な発想の場というイメージのみでとらえられ、企画する側も自由な進め方や場の雰囲気に応じて臨機応変な応対をすれば良いという態度で臨む場合があるようです。
しかしその結果は「楽しい集まりだったけれど何が決まったのだろうか?」という参加者の感想につながりがちです。参加者に「今日の集まりでこれを作り上げた」という目に見える成果と「今日の集まりでこのことが決まった」という達成感を感じて帰ってもらうことが重要です。みんなが共有できる目標をはっきりさせてワークショップのプログラムを考えましょう。
ワークショップのプログラムづくりとは、あらかじめ決まった結論に導く仕掛けを考えることではなく、皆で考え知恵をしぼり、「ある事柄に参加者全員で判断をくだす」ための合理的な進め方を考える事です。何事につけてもグループで適切な判断を下すためには、正確な判断材料や情報、そして十分な意見交換が必要になります。
プログラムづくりで最も大切なポイントは、この判断材料をどう提示し、様々な考え方をどう拾い上げ、いかに意味ある意見交換の場をつくるかということです。
このように市民活動の中でワークショップを用いるということは、単にスマートで完成度の高いイベントや事業を行うということではなく、それらを作り育てていく人々の想いがどう形として表現できるかということになるのです。そしてワークショップはあくまでも道具です!
扱うあなたが目的をしっかりと持つことが一番大切であることは、肝に銘じておいてくださいね。