「徹底解説!活動計算書」受講レポート

6月7日(金)・8日(土)の両日、やまぐち県民活動支援センター主催のNPO会計講座「徹底解説!活動計算書~作成のコツ、おしえます~」を受講してきました。

講師は、税理士で認定NPO法人NPO会計税務専門家ネットワーク理事長の脇坂誠也氏です。
事業数が少ない、現金預金以外に資産・負債のない法人向け【Aコース】(初日)と、Aコース以外で複数の事業を行っている法人向け【Sコース】とがあり、両コースとも3月末決算の法人で定員いっぱいの参加者でした。

両コースともに、はじまりは「NPOの会計の目的」についてでした。
「会計とは説明」です。NPO法人の会計は毎年公開されます。それは、お金を何に使っているか、不正がなかったかを示すためだけではなく、活動の内容をより多くの人に説明し理解と共感を得るために必要なことだからです。そして、それをもって信頼を積み重ねるという責任がNPOにはあるのです。このことを念頭において、会計で活動が見えるように「勘定科目の設定」「帳簿のつけ方」などを会計基準にのっとりながら、創意工夫して作成することが重要とのこと!

NPOにとって会計は、
① 市民にとってわかりやすいものであり、丸2社会の信頼にこたえる会計でなくてはなりません。

※NPO会計基準についてはWEBサイト「みんなで使おう!NPO法人会計基準」を参考に。

講師によると、東日本復興支援で集められたお金のうち、実に9割が直接被災者に渡される「義援金」で、NPOなどに託された「支援金」はわずか1割だそうです。これは社会のNPOに対する信頼の尺度と言えるのではないかと。実際にNPOを語り支援金を横領したという事件もあったようで・・・
講師は、これからは、NPO全体がセクターとして一丸となって、信頼を得るためにもわかりやすい会計を目指しましょうと、呼びかけました。

NPO会計基準は、従来会計基準がなく千差万別だった会計を、よりわかりやすいものにして信頼と支援をうけやすくしようというものです。記載例などは、必ずこうしなければならないというものではないが、一応このような慣例に従って作成するのが望ましいということで出しているのだということ。
お金の出入りを記載する「収支計算書」から、活動に係る事業の実績を表示する「活動計算書」に改正されたのも、会計方法を出来る限り統一しようとするのも、NPO法人の信頼性の向上が狙いなのだそうです。

ここからは、語句の解説や帳簿のつけ方となるのですが、普段経理はノータッチで完全にド素人の私でも、あぁこういうことだったのか!と会計報告の見かたもわかるようになるありがたーい内容でした。

■NPO法人の財務諸表について
財務諸表とは、①活動計算書、②貸借対照表、③財務諸表の注記の3つを言います。
財産目録は、貸借対照表の内訳明細書の機能を持つもので、財務諸表とは別の会計報告書になります。

①活動計算書とは
「収益」から「費用」を差し引いて「当期正味財産増減額」を計算し、「前期繰越正味財産」を合わせ「次期繰越財産」を表したもの。文字で見ると難しそうですが、どのような形で資金を集め、活動に係るコストがどのくらいだったか、活動の結果、正味の財産が1年間でどのくらい増えたか減ったかを表すものです。

②貸借対照表とは
年度末時点での資産、負債、正味財産を示すものです。貸借対照表では「資産合計=負債合計+正味財産合計」となり、正味財産合計が活動計算書の「次期繰越正味財産」と必ず金額が一致するようになっています。活動計算書が活動によるお金の流れを表すものであるのに対し、貸借対照表はその実態を証明するものにあたります。なので、ここが一致しているということが信頼される会計報告の大前提であり、この金額が一致しなけれなどんなに細かく書かれた会計であっても、信頼される会計だとは言えないのです。

③財務諸表の注記とは
活動計算書や貸借対照表の補足の意味合いではあるが、非常に重要な役割を果たすものとして重視されます。活動計算書や貸借対照表では表すことができない、各種内訳や算定方法、会計方針などの有益な情報を記載します。

■勘定科目について
収益の基本勘定科目5つ
・受取会費
・受取寄付金
・受取収益
・その他収益
補助科目などでさらに内訳表示も可能です。

費用は、
(1) まずは、「管理費」と「事業費」に分ける
(2) さらにそれぞれを「人件費」と「その他経費」に分け、
(3) さらにそれぞれを形態別に勘定科目別に表示

※なぜ形態別にするのか?
○○事業費用(機能別)とすると何に使ったのかわかりにくい。そこで、複数の事業を行っている場合、どの事業にどのくらい使ったかは「財務諸表の注記」に示すのが望ましい。

■参加者からも質問のあがった共通経費の按分について
NPOのスタッフで、管理部門と事業部門を兼任しているという人は多い。このような場合はまず「管理」に係る業務について取り決め、それ以外は事業に係る業務とするのがよいうそうです。まずはそうしておいて、そのうえで共通経費が出てきたときに按分します。光熱費などは面積割合で、人件費では、管理業務に従事した時間を見積もり、残りを事業に従事したと考える「従事割合」が計算しやすいとのことです。

■ボランティアによる役務提供をうけた場合について
原則では、ボランティアによる役務提供については、特に会計上の処理や財務諸表への表示は行わない。となっていますが・・・
実際の活動規模を過小評価されてしまうような場合、本来は支払うべきものだと思われる場合などはこのとおりではありません。

会計処理が容認される場合
①そのボランティアによる役務の提供が、活動の原価の算定に必要な受入額である。
②そのボランティアによる役務の提供金額を「合理的に算定できる場合」には「財務諸表に注記」することができる。(※注記するかしないかを選択できる)
※合理的にとは?誰がいつ何時間ボランティアしたかを記録したものがある
③そのボランティアによる役務の提供の金額を「客観的に把握できる場合」には注記に加えて「活動計算書に計上」することができる。(※活動計算書に計上するか、しないか選択できる。もちろん、注記だけにすることも選択できる)
※客観的にとは?領収書の代わりとなる本人発行の証明がある。

ボランティアだけでなく、無料での会場の提供、本来支払われるべき額の減額なども含まれます。

他には・・・
○スタッフなどによる立替払いがある場合
○棚卸資産の計上の仕方
○減価償却の概念・算出方法
○固定資産か消耗品化処理の仕方
○源泉徴収(10.21%)など預り金の計上
○定款にのせているその他事業を行わなかった場合
についての解説がありました。

今回、両日参加した甲斐あって、さっぱりわからなかったことが見え始めてきて会計についてこれからもっと理解を深めたいと思うようになりました。まずは、さぽらんて(NPO法人やまぐちせわやきネットワーク)の会計報告はどうだったかな~。と確認。他の法人さんの会計も見てみよう!
どのNPO法人も記載例のようなパターンで可能な限り統一されてくると、見る側の理解も間違いなく深まるだろうと思いました。見る側にも力が必要ですね。

<スタッフ 小田>

会場入り口のホワイトボードです。
講座の様子です