「地域を巻き込むプロになろう!」セミナーⅣ・Ⅴ(講座レポート其ノ二)

地域を巻き込むプロになろう!
山口県県民活動中核的人材育成セミナー
NPO・地域コミュニティ・企業向け全5回

山口県県民活動団体中核的人材育成業務として、NPO法人山口せわやきネットワークが企画・運営のセミナーが以下の通り開催されました。

開催日時:2016年2月13日(土)13:00~16:00
会場:防長青年館パルトピアやまぐち大ホール

講座名:Ⅴ.共感力を高める広報戦略
~自分たちの活動の良さを見つけ、社会支援行動の習慣化に向けての広報手法を知る~

講師:横森 祐治(よこもり ゆうじ)氏
<大手広告代理店社員>

講師:長井 一浩(ながい かずひろ)氏
<NPO法人 明日育 常務理事>

コーディネーター:久津摩 和弘(くづま かずひろ)氏
<地域福祉ファンドレイジングネットワーク代表>

☆セミナーの内容は以下の通り。

★第1部 広報のキホン(担当:横森さん)

テーマ1.(広報を考える前に)自分のことを知る。
自己紹介できるチカラ、自分と相手の共通点を見つけるチカラ、まわりに伝わりやすい「ことば」にするチカラ、が必要。

☆広報のヒント:自分のことを知らないと、自己紹介はできない。…自分たちの課題・強み、自分たちは何をしている人なのかをはっきりさせる!

テーマ2.「広報戦略」って何か考えてみる。
・広報⇒目的×ターゲット×メッセージ
・「目的」を明確にする。→「ターゲット」を明確にする。→「メッセージ」を明確にする、の順番。
・「メッセージ」をするときはそのつど、「何のために?」「 誰に?」 を考える。相手が違ったら言い方、やり方を変える。
☆広報のヒント:広報って、自分と相手のことを「考える(想像する)」作業。
☆広報のヒント:メッセージは1つに。
☆広報のヒント:言いたい話を、聞きたい話へ。
事例紹介:チャイルドファーストPROJECT(国内最大のクラウドファンディングREADYFORで映像を制作)
…医師とクリエイターで子ども虐待を「予防」する映像をつくり、虐待で苦しむ子どもたち、お母さんを1人でも減らしたい。「児童虐待」よりも「子育て支援」にしたほうが伝わりやすい。
☆広報のキホン:戦略の基本は「優先順位づけ」。ポイントは、何を「しない」か。

テーマ3.「共感って?」
・共感される広報って?
「いい広告」よりも「いい商品」の方が重要。共感される「事業・活動・ビジョン・解決策・しくみ」が大事。「それ、いいね!」と思ってもらえるか。

・事例紹介:Yahoo!JAPAN / search for 3.11 …「3.11」というキーワードでYahoo検索するだけで、1人につき10円が復興にたずさわる団体に寄付される、震災の「風化防止・復興支援」のプロジェクト。「検索」という日常の行為を、社会課題を解決する「アクション」に変え、日本中の老若男女あらゆるユーザーが、最も低いハードルで参加。
“巻き込むメソッド”…みんなのneedsの受け皿をつくる。参加のハードルを下げる。
“伝えるメソッド”…SNS特にfacebookでシェアしたくなる仕組み・表現を設計する。
社会課題の「大」「小」×参加ハードルの「高」「低」→インパクトの大きさ

☆共感のヒント:心が動かないと、人は反応しない。
「かわいい」「かっこいい」「おしゃれ」「面白そう」「初めてみた」「何これ?」「おいしそう」「たのしそう」「かわいそう」「切ない」等。

☆広報のヒント:ライバルは、他の団体の広報じゃないかも。
新聞のチラシ、雑誌、映画、あるいはスマホ、家族旅行など、みんなが割いている時間の奪いあい!?

★第2部 つながり、巻き込む(実践事例)(担当:長井さん)

☆「特定非営利活動法人 明日育」とは?
・目指す社会(vision)…誰もが自由に「なりたい自分」を夢見て目指せる社会をつくる。
・取り組むこと(mission)…育つことのすべてを。すべてのことを、「育つ」という角度から考える、ということ。

・事例紹介①
☆Green Down Project(一般社団法人 Green Down Project)
枯渇する羽毛…中国やロシア等で羽毛の需要が高まっている一方、日本では、使わなくなった羽毛製品の大半はゴミとして消却されている現状。
羽毛はリサイクル可能な「限りある資源」だということを多くの人に知ってもらおうと Green Down Projectを設立。羽毛を扱う企業、関係者などが協力してリサイクルできる羽毛製品の回収とリサイクルを共に進めていく!

☆Green Down (再生羽毛)は、とにかくきれい・安全・安心の高品質!

☆Green Down Projectの考え方
循環資源、共同資源という考え方は今の時代に不可欠。循環型社会の実現が、人とまちを豊かにする。

☆Green Down Project のプロセス
回収→輸送→解体→洗浄→製品→販売→使用→提供→回収…のサイクル

☆Green Down Project への関心
・障がい者就労支援、地域貢献…羽毛サイクルで障がい者の雇用が生まれる。
・環境保全…羽毛サイクルは環境を守ることができる。
・羽毛の安定供給…食肉の需要や鳥インフルエンザ等の環境要因による影響を受けにくく、安全な製品が生まれる。

☆モノも大切、人も大切…障がい者就労に重点を置いている。

☆広報アプローチ
・Award…グッドライフアワード(環境省)/ ロハスデザイン大賞 など
・共通資材…ロゴ / 下げ札 / ネームなど必ず共通のモノを使用する
・Event…イベント会場での羽毛回収(エシカルファッションカレッジ、TINY GARDEN FESTIVAL、ロハスフェスタ、イオン環境フェスティバル、ツネイシホールディングス等)
・Press Release…Green Down Projectの広がり(羽毛を回収して募金)
…京都西川、西川リビング、ユニー生誕45周年記念、小学校の廃品回収。
…多種多様な参加企業団体:ダウンの生産者(羽毛洗浄企業)、製品生産管理者(羽毛原料購入企業)、製品販売者(羽毛製品販売企業)、羽毛製品回収販売者(羽毛製品回収・解体グリーンダウン原料販売企業)、協力会員(羽毛製品回収企業・団体)など、現在、23の企業と団体が参加している。

☆共感と参加(仲間)をつくるコツって?
長井さんは、コミュニケーション(=相手を動かすこと)を大切にしている。自分の望む行動を、どうしたら相手に起こさせられるか。

・ヒント①:「思い」が人を動かす。
・ヒント②:「外部の人」を導入できる体質を作れるか否か。…自分たちだけではできないから、一度繋がってみる、一緒にやってみる、という発想が必要!
・ヒント③:仲間をつくる。…人を育て、人財を揃えるため。
繋がり合うことによって、新たな価値が創出される。
課題解決には“つながる”が効果的で、①知る!→②理解する→③共感が生まれる→活動スタートする の順でつながっていけばよい。
・ヒント④:「知ろう」とする意識。
・ヒント⑤:自分のことを知らないと、自己紹介はできない。
・ヒント⑥:連携協働って、自分と相手のことを「考える(想像する)」作業。
連携協働=目的 × 相手 ×メッセージ(何のために?誰に?何を言う?)
・ヒント⑦:要するに、 何が言いたいの?何がしたいの?

☆体制づくり仲間づくり
・コツ①:話す(知る)機会を増やす。(環境づくり、楽しい)
・コツ②:参加型で創る(縦割りではなく、横への広がる意識)
・コツ③:利害で組む(テーマで組む、関係者で組む、解決型で組む)…利害がしっかりしないと、きれいごとだけでは長続きしない。
・コツ④:既存の仕組みにとらわれない(2つの“想像”と“創造”)
・コツ⑤:モデルを創る(新しいチャレンジ、小さな成功体験!)
・コツ⑥:ズバリ!役割の再構築(それぞれの役割と機能に期待)
そして何よりも、
・コツ⑦:「楽しい」が人を集める。

☆広報の担当者は、ひとりじゃなくていい。
☆自分の不得意は、誰かの得意。できることをやる。

★第3部 新広報戦略を考えてみる。(担当 横森さん)

☆明日からやってみたい広報、次からやってみたい広報を、考えてみる。
「目的」「ターゲット」「メッセージ」を改めて整理しながら、ターゲットが振り向き共感してくれそうな「活動・施策・広報のツール」を考える。

☆小さな広報
いわゆる広報…(共感!を得るには)何のために、誰に、なんと言うか

☆大きな広報
いわゆる広報(共感!)

仲間づくり(共感!)…広報の仲間、メディアの人、自治体の人

リアルな活動(共感!)…活動の見える化

ありがとう(共感!)…使いみち報告、お礼

☆広報のキホン:キーワードは、「それも広報!」…広報の固定概念を壊す。いい商品、いい活動はすぐ広がる。

☆久津摩さんのまとめ
・自分たちの団体って何だろう?
・自分たちの活動の強みって何だろう?等

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今回をもって、山口県県民活動中核的人材育成セミナー「地域を巻き込むプロになろう!」は終了した。
いずれの講師にも共通していたのが、「生き生きと楽しそうに」セミナーを行っておられたことだ。
そこには、普段の活動が充実していて、自分の行っている活動に情熱・矜持をもって取り組んでおられることがにじみ出ていた。
そして、人を惹きつける魅力に溢れた、「全国有数の“巻き込み”のプロによる共感力UPセミナー」を展開してくださった。
こういった方々が社会変革を起こしていくのだろう。
しかし、社会を変えているのは「歴史の教科書の登場人物」だけではない。
数え切れないほどの「ごく普通の人々」がその陰に潜んでいる。
「いたって平凡な自分に社会課題の解決ができるだろうか」と思ってしまう、僕を含んだ大部分の人々にも活躍のチャンスがきっとある。
そう、僕たちは、一連のセミナーを通して、社会課題解決の参考になる様々なポイントを学んだのだ。
まずは肩ひじ張らずにできることからやってみよう。

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講師の栗田さん、林さん、小川さん、小柴さん、横森さん、長井さん、コーディネーターの久津摩さん、ありがとうございました。

会場設営、講座運営等、ご協力くださった各市民活動センターの皆さん、及び、今回のセミナーに関わってこられた全ての皆さん、ありがとうございました。

セミナーにご参加くださった皆さん、ありがとうございました。

またの機会にお会いしましょう。

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(補足)今回の講座に参加してくださった方は、是非とも、その情報を友人・知人にシェアしてほしい。

「さぽらんて」にとって、「それも広報!」

なお、2015年12月5日(土)のセミナー
Ⅰ.社会課題解決への企画と財源確保
~寄附事業開発をするためのファンドレイジングと遺贈~
の内容はこちら
そして、2016年1月16日(土)のセミナー
Ⅱ.プロボノ事例と組織マネジメント
~しものせき後見人支援プロジェクトの場合~
の内容はこちら

同じく1月16日(土)のセミナー
Ⅲ.社会課題解決に向けた企業ノウハウの活用
~プロボノファンドレイザーの視点から~
の内容はこちら
2月13日(土)のセミナー
講座名:Ⅳ.地域を変えるおしゃれな社会貢献のつくり方
~黒部市の地域密着型ファンドレイジング~
の内容はこちら
スタッフ:高橋

講師の横森氏
ワークの様子2
講師の長井氏
コーディネーターの久津摩氏