「地域を巻き込むプロになろう!」セミナーⅣ・Ⅴ(講座レポート其ノ一)

地域を巻き込むプロになろう!
山口県県民活動中核的人材育成セミナー
NPO地域コミュニティ・企業向け全5回

山口県県民活動団体中核的人材育成業務として、NPO法人山口せわやきネットワークが企画・運営のセミナーが以下の通り開催されました。

開催日時:2016年2月13日(土)10:00~12:00
会場:防長青年館パルトピアやまぐち大ホール
講座名:Ⅳ.地域を変えるおしゃれな社会貢献のつくり方
~富山県黒部市の地域密着型ファンドレイジング~

講師:小柴 徳明(こしば のりあき)氏
<NPO法人明日育 副代表・黒部市社会福祉協議会>

コーディネーター:久津摩 和弘(くづま かずひろ)氏
<地域福祉ファンドレイジングネットワーク代表>

☆セミナーの内容は以下の通り。

★「おしゃれ?」な社会貢献とは、「HAPPY&HAPPYな関係!!」と解釈。

★学んだこと
・コミュニケーション≒相互意思疎通(…お互いに意思が通じ合うこと)。
・失敗するパターンがある(=成功する方法がある)。(…自分たちの都合ではなく、相手のことを考えることが重要)。
・みんな良くしようと思っている(=誰ひとり、悪くしようと思ってはいない)。

★いろいろやってみたこと
☆やってみたこと①
□意識を変えていく。
・赤い羽根のロゴマークや文言の入った、ジャンパー・ポスター・募金箱など、職場のいたるところに「赤い羽根共同募金」が目につくようにする。
・10月1日には職員は赤い羽根・バッジをつける。

□ちゃんと伝える ありがとう…電話・手紙・直接会う
・募金する人はそのお金が何に使われているのか分かっていない。

・受け取る団体を連れて、学校の子どもたちに「ありがとう」を言いに行く。
・手書きでお礼メッセージを書く。
※平日の昼でも、団体は「自分たちの活動を知ってもらえる」ので喜んで学校に行くし、「お金を集めること」を意識するようになる。

☆やってみたこと②
□最先端をローカル的にパクる。
・黒部が編み出した新たな手法は、
Real Crowd Funding(リアルクラウドファンディング)…地域の人々が、募金したいと思った時に、募金できるように市内の至る所に募金箱が設置してあり、いつどこでも募金できる環境(状態)にすること。(※小柴さんの定義)
黒部市内の飲食店、公共施設、商店、企業、スーパー、コンビニなど150ヶ所に雪対策のための募金箱を設置し、3か月で1ヶ所当たりの平均約1,500円を集めた。

☆やってみたこと③
□地域の課題を解決するためのしくみをつくる。
□地域課題解決のための資金調達との共通点
明確なmissionがある→誰からpayを得るか
□お金の色を考える。…助成金、寄付金、募金、出資金、会費等々…、そのお金の特性(強み・弱み)は?

□事業計画の立案
ニーズキャッチ(アウトリーチ、ネットワーク、多様なアンテナ)

地域課題(明確なmission)

マルチステークホルダー(多様な視点で、いろんな人たちと組む)

制度設計(人・物・金)

中期計画(3年後は…)…3年が山。補助金が切れる。担当者が変わる等。

巻き込む(継続発展)…活動する人、関心層を増やす。
※先を見て、常に発展、変化し続けることが重要。

□制度設計
事業計画(mission)と資金計画(pay)
・ファンドレイジングの基本的な考え
寄付を広く集める。募金実績額を上げるだけではなく、制度設計にしっかりとした資金計画と継続発展するための「資金循環」を考える。
・共感と参加を促すfundraising。

□地域特性の課題…雪害
・みんなこの課題をどうにかしたいと思っているが、地域、社協、行政、共募、ボランティアがそれぞれにアプローチしている。
・年によって降雪量が異なり、緊急性・一過性があるためなかなか解決しない。
・誰もこの地域を悪くしようと思う人などいない。つなぎ役(コーディネーター)が存在すれば上手くいくはず。役割分担と社協の音頭取りが必要。
・マルチステークホルダー(利害で組む)…多くの利害関係者を集めて、どんなメリットがあるのかそれぞれの利害で組む。

□「雪と共に生(活)きる募金」
あったか雪募金~雪とともに暮らす人たちを支える
…募金が、積雪地域で活動する雪かきボランティアを支えるお金として使われる。

□雪と共に生(活)きる募金のしくみ
・募るしくみ…雪募金箱(タイムリーな寄付)、イベント募金・企業募金(関心層の拡大)、黒部市出身者(新たな寄付層)
・助成するしくみ…地区一斉雪かきDAYの活動費(課題解決のしくみの支援)、地区の雪かき隊の活動費(共助活動の支援)、雪を活かしたイベントへの助成(将来的な助成、プラス面の助成)

□これからの展開
マイナス面(雪害支援)とプラス面(雪や水を活かした活動支援)の二面性を出す。

★小柴さんの結論(伝えたいこと)
Ⅰ.当たり前のことをやる。
手段・手法に走る前に、募金箱の設置、「ありがとう」を言う等。
Ⅱ.つくるより、活かす。
共募の活用、雪かきする人、お金を出す人等、意外にありますよ、いますよ。
Ⅲ.そこに愛はあるのか!
「likeからloveへ」で、全然違う。
小柴さんは共同募金を愛している。担当が変わっても継続していけるように。事業をする時に「心」を入れないと、なかなか続かない。

□久津摩さんによるまとめ
・コミュニケーションは相互意思疎通なので、「顧客目線に立とう!」
・ファンドレイジングサイクルについての説明 等

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12月5日に始まり、年をまたいで開催してきた「山口県県民活動中核的人材育成セミナー」。
「地域を巻き込むプロになろう!」と称して、「社会課題解決」のために、いかにして「地域を巻き込む“プロ”になるか」について、様々な実例を交えて手段・手法を学んできた。
ファンドレイジング、クラウドファンディング、プロボノ、プロボノマッチングサービス、チャリティーパーティ、チャリティーイベント、ソーシャル系イベント等、「その道のプロ」以外には、あまりなじみのない「メソッド」の紹介といった趣もあったかもしれない。
事実、「セミナーⅠ~Ⅲ」の参加者アンケートを集計したところ、大部分は、セミナーが分かりやすく満足なものだったと「好意的」に受け取られていた一方で、難しく、夢のような話のように感じた方も一部見られた。
そういった感想をお持ちの方にとっては、これらの手段・手法は、「都会の人口」、「都会の資金」だから実現できたことであって、所詮、田舎の山口では現実味をあまり感じられなかったのであろう。
勿論、進歩的な手段・手法を取り入れることによって、組織のミッション解決に多大な成果をもたらす可能性は大きいだろうし、それが現時点で着手できそうな団体は、是非、実行に移してほしい。
だが、上記の「夢物語」のように感じた参加者の方にとって、今回のセミナーは、まさしく「目から鱗」だったのではないだろうか?
そう、まずは「あるものを活かして、愛を持って、当たり前のことをやる」ことから始めよう!

なお、2015年12月5日(土)のセミナー
Ⅰ.社会課題解決への企画と財源確保
~寄附事業開発をするためのファンドレイジングと遺贈~
の内容はこちら
そして、2016年1月16日(土)のセミナー
Ⅱ.プロボノ事例と組織マネジメント
~しものせき後見人支援プロジェクトの場合~
の内容はこちら
同じく1月16日(土)のセミナー
Ⅲ.社会課題解決に向けた企業ノウハウの活用
~プロボノファンドレイザーの視点から~
の内容はこちら
スタッフ:高橋

講師の小柴氏
アイスブレイクの様子
ワークの様子
チーム名1
チーム名2