NPOの花道~NPO法の意義と特徴~

特定非営利活動促進法(NPO法)は市民の社会貢献活動の健全な発展を促進し、社会のニーズに合わせて柔軟な活動が展開できようようにした法律です。しかしながらその法の意義は浸透していないように感じています。
今後のNPOの自由な活動展開のためにもまず、その法の基礎を知り、社会的信頼の得られる組織づくりを目指してもらいたいと講座を開催しました。

日時:8月28日(木) 13:30~16:15
講師:則近久美子氏(山口県県民生活課)
場所:さぽらんて会議室
参加者:9名

■まずは基本中の基本NPOとは
Non Profit=非営利、Organization=団体・組織 →非営利組織

「非営利」とは、事業を行うなどして利益を得た場合に、その利 益をそれぞれの組織が掲げる目的を達成するために使用する、と いう意味。
株式会社のように、利益を出資者に分配するものは、「営利組織」となる。
そういう意味では、広義のNPOには、学校法人や医療法人、生活協同組合や同窓会等も含まれると考えられる。
NPOのうち、特定非営利活動促進法(NPO法)の要件を満たし、所轄庁の認証を経て、法務局で登記を行った団体には特定非営利 活動法人(NPO法人)という法人格が付与される。

■NPO法施行の経緯
◇NPO法成立以前の日本の法人制度
NPO法が成立する以前は、非営利活動を行う法人の一般的な規定はなく、非営利でかつ公益を目的とする公益法人と、営利法人 の規定が民法にあるだけだった。
また、このうち公益法人については、財団であれば設立時に多額の基本財産を要求されたり、社団では会費を払う多くの社員が 必要とされたため、小規模な社会貢献活動を行う団体が法人格を 取得することが難しいという問題があった。
また、仮にこうした要件をクリアしたとしても、公益法人は主務官庁の許可・監督制であったことから、その時々の社会ニーズ に合せて柔軟に活動していく市民団体にとって、利用しにくい制 度であったと言える。
しかし一方で、法人になれない団体は、事務所の契約を代表者の個人名で行い、代表者が変わるたびに契約を結びなおさなけれ ばならないなど、不便な面もあった。

◇NPO法の成立のきっかけーーー阪神・淡路大震災
NPO法が作られる直接のきっかけとなったのは、6,200余 名の犠牲者を出した平成7年の阪神・淡路大震災である。このと き、全国から1,720億の寄附金が自発的に寄せられ、延べ  130万人のボランティアが活躍したと言われている。
しかし、ここで活躍したボランティア団体の殆どは法人格がな い任意団体であった。社会的な認知もないことから寄附が受けに くく、また寄附税制の優遇措置の適用もないなど制度的な欠陥が 各方面から指摘された。こうしたことから、ボランティア団体を はじめとする、民間非営利団体の活動を確固たるものにするため に、こうした団体の法人化が必要だという社会的認識が生まれ  た。

◇議員立法による成立
阪神・淡路大震災をきっかけに、政府は、平成7年2月に18 省庁による「ボランティア問題に関する連絡会議」を設置し、経 済企画庁を中心にNPO法案の策定に入った。また、同じ頃、各政 党が市民団体との意見交換を重ねながら独自のNPO法案を考案し ました。そして平成10年3月19日、「特定非営利活動促進法 案」が議員立法として衆議院本会議で全会一致で可決され、成立 することとなった、3月25日「特定非営利活動促進法」公布さ れ、同年12月1日に施行された。

※「議員立法」:国会等で、議員により発議される法律。議員が熱心にその問題に取り組んでいたり、新しい価値観に基づいたものが多い。(日本の国会において成立する法律案の大多数は内閣が提出したもの)

◇制度改正、認定・仮認定制度の導入
平成23年6月には、NPO法施行以来の大幅な改正が行われ、 認証制度(法人の設立、管理・運営)について、制度の使いやす さと信頼性向上のための見直しが行われた。
また、NPO法上に新たに「認定制度」が設けられ、「認証制  度」と「認定制度」の2階建ての法律となり、両制度の所轄庁が 一元化されるとともに、設立間もないNPO法人のスタートアップ 支援を目的とする「仮認定制度」が導入された。
これらを内容とする改正は平成24年4月1日から施行され  た。

■NPO法の特徴
NPO法制度は、市民が行う自由な社会貢献活動の発展を目指しており、以下のような特徴がある
①認証制度
NPO法人制度を取得するには、所轄庁の認証を受ける必要があ る。基本は書面審査であり、基準に適合していて、法令違反等が なければ認証を受けることができる。
作成する書類が多く、認証まで一定の期間を要するが、手続き は比較的容易である。
②行政の介入を必要最小限に
所轄庁はNPO法人に対して監督権限を持つが、「明らかな法令 等違反」や「相当な理由のある場合」に限られ、積極的に行使で きないこととされている。
行政が常に監視する制度では、市民の自由な社会貢献活動が実 現しないためと考えられる
③情報公開
NPO法人は、市民が監視・チェックを行い、育てるものとされ ている。
そのため、NPO法人の事務所には閲覧に供する書類を備え置  き、社員や利害関係者に閲覧させる義務がある。
また、所轄庁には閲覧に供する書類を提出し、誰もが閲覧でき る状態にすることとされている。

■NPO法人格を取得するメリットと義務
一般に、NPO法人を含む「法人格」を取得することによって得 られるメリット及び義務は以下のようなものがある。
<法人格を取得するメリット>
・契約の主体になれる
・所有の主体になれる
・団体と個人の資産を明確に分けられる
・社会的信用の向上につながる
・情報公開により一般の人がアクセスしやすい
・団体として法的なルールを持って活動できる
<発生する義務>
・官公庁への各種届出
・運営や活動についての情報公開が必要
・税法上は「人格なき社団等」並みに課税される
・解散した場合の残余財産の帰属先が限られており、団体の構   成員には分配されない。
・解散する際には、官報への広告掲載料として約3万円が必要

◇認定(仮認定)NPO法人になることのメリット
<認定NPO法人への寄附者に対する税制上の措置>
①個人が寄附した場合
個人が認定(仮認定)NPO法人に対し、その法人の行う特定非営利活動にかかる事業に関連する寄附をした場合には、寄附金控除(所得控除)又は税額控除のいずれかの控除を選択適用できる。
②法人が寄附した場合
法人が認定(仮認定)NPO法人に対し、その法人の行う特定非営利活動にかかる事業に関連する寄附をした場合は、一般寄附金の損金算入限度額とは別に、特別損金算入限度額の範囲内で損金算入が認められる。
③相続人等が相続財産等を寄附した場合
相続又は遺贈により財産を取得した者が、その取得した財産を相続税の申告期限までに認定NPO法人(仮認定NPO法人には適用されない)に対し、その法人が行う特定非営利活動にかかる事業に関連する寄附をした場合、その寄附をした財産の価額は相続税の課税価格の計算の基礎に算入されない。
<認定NPO法人のみなし寄附金制度>
認定NPO法人が、その収益事業に属する資産のうちからその収益事業以外の事業で特定非営利活動にかかる事業に支出した金額は、その収益事業に係る寄附金の額とみなされ、一定の範囲内で損金算入が認められる。(仮認定NPO法人には適用されない。)

―――以上のように、NPO法の考え方の基礎を習った後に、NPO法の条文についての説明となりました。

主な解説ポイントは、○法の目的○公益の意味○定義○団体要件○活動要件〇名称の使用制限○その他の事業の実施の制約○登記義務○県の認証手続き・基準○柔軟な活動をするための定款例○毎年の事業報告○解散手続き○監督 など盛りだくさんでした。

これまで3年以上もNPO法人の認証を行ってきた講師の則近さんは、「NPO法人になる前に、活動の見通しを立てて、団体内で役割分担することが重要だと感じている。法人格を取得したら、団体内部に法律関係を担当する人を置いて、全てはわからなくても、県や関係機関に問い合わせをしながら理解し、社会的義務を果たすことが必要」とのことでした。

詳細は、山口県のNPO法人データベース内の情報をご覧ください。
NPO法の概要

NPO法人の設立及び管理・運営の手引き
【参加者アンケートから】
・NPOへのみちのりはまだまだ遠いですが、今後メリット、デメリット、義務や責任等をきちんと理解していきたい。
・小人数で聞きやすく、NPO法人設立やNPO法の基本的な部分からの解説がとてもわかりやすかった。
・「手引き」は前から読み込んでいたつもりだったけど、一つ一つ解説して頂き、もっと早く、この講座に参加したかった。
・NPOに関する用語がやっと一つ一つ繋がってきたように感じ、もう少し、総会資料を読みなおさなければと思いました。
・とてもわかりやすい語り口で、理解できました。法律について深く知りたいと思いました。

少々酸欠になっている夏の終わり、参加者殆どが法律は苦手な分野にも関わらず、休憩時間も取らずあっという間に時間が過ぎ、法律女子会のような講座となりました。

<わたなべ>

講座の様子です 講師の則近さんです